ホントに悲しくって、街路樹もギターを持って歌っている青年もみんな恨めしく見えた。
そこに似顔絵を描いて商売している男がいた。
男はけっこうヒゲ面の似合う風格のある感じでかかげてある絵もけっこう上手だった。
わたしは彼に描いてもらうことにした。
男は私の心情を察してかあまり何も聞かず、優しい言葉だけをかけてくれながら描いた。
1杯の紅茶のようなあたたかい時間がゆっくり流れた。
男は笑顔で絵を差し出し
「お代はいらないよ。幸せの出世払いで。」
と、ガンジス川のほとりに住んでいる人のような顔で言った。
私はその絵を見て驚いた。そして言った。
「え?私こんなに鼻低かったっけ?すごく眉毛薄いし。それにこんなにぽっちゃりしてないわよ。ていうか何コレ?人間?」
吹きすさぶ寒風の中で男は頭上に大仏が落ちて来るくらいの衝撃を受けた。